2006年12月15日

山田共同売店にて その2

前回の続きです)

話はちょっと戻って、山田共同売店を訪れた日の前日、
私は北川さんにできたてホヤホヤの「共同店ものがたり」を読んでいただき、
共同売店の成立や現状についておおまかに説明しました。
北川さんはこう語っていました。

「今、医療法人や社会福祉法人が、介護保険という巨大市場をねらって、
各地の高齢化・過疎化する地域にどんどん進出しようとしている。
早く市民の手による地域密着型、小規模分散型のケアシステムを作らないと、
お年寄りたちの年金は、医者や社会福祉法人に吸い尽くされてしまう。
介護保険料はつり上がり、お年寄りたちは高いカネを払っていながら、
工場の流れ作業のような質の悪い介護サービスを受けざるを得なくなる」

介護保険料に地域間格差があることすら知らなかった私は、
北川さんの話に目からウロコの思いでした。

「共同売店に、デイサービスや、子育て支援施設、学童保育などを併設すれば、
人の集まる場になるし、ここで買い物をすることもできるし、生産の場にもできる。
こうやって、地域経済自体が循環しはじめる。
民家を利用したグループホームやデイサービスが全国で広がっているが、
共同売店のような建物やしくみが残っているというのは、地域の大きな財産。
これを活用しない手はない」

山田共同売店にて その2山田共同売店にて その2
(山田共同売店で売られている地元の野菜や果物と、手作りコーレーグース)

そしてこの日、山田共同売店を訪れ、
北川さんはひと目見て、
「ここならデイサービスを併設した地域密着ケアができる!」
と目を輝かせたのですが、、、、

北川さんの話を聞いていた売店の斉藤さんが、
「実は、ここをデイサービスに貸すことになっているんですよ、、、」
とポツリ。
一瞬、僕もドキッとしました。
「どこや?」すぐに聞き返す北川さん。
「医療法人やろ。やっぱりもう目つけてたんや、、、
介護市場は今や7兆円を越える巨大マーケット。
それをねらって医療法人や社会福祉法人が、外へ、各地域へ進出してきている。
奪い合いは、もうとっくに始まっている。
みんな、福祉と聞くと、心優しい人たちのやる世界と思ってるけど、ホントは戦争やで。
ぼーっとしてたらダメ。
地元の人が知恵を絞って、自分たちで地域を守らんと、食い物にされるだけ。
吸われるだけ吸い上げられて、後には何も残らない。
若者は去り、高齢者だけが残る、限界集落というやつ。
滋賀ではこうならないよう、先手を打って地域ケアの拠点を市民の手で作ってきた。
こういうしくみをきちんと作れたところと、そうでないところでは、
今後、大きな差ができてくる。かわいそうだけど、、、。
沖縄は残念ながら全国一、介護保険料が高い地域。
地域の市民の手でケアのしくみを作れば、安くて質の高いケアが可能になり、そのお金は地域で循環する。
沖縄のお年寄りたちは、限られた年金の中から高い保険料を払わされ、流れ作業の工場のような介護を受けるしかない。
しかもそのお金は、地域から都市部へと流出していく一方。
そいういう意味では、沖縄にはもう相互扶助のしくみは残っていない」

私と斉藤さんは、返す言葉もなく、ただうなずくだけでした。
前日聞かされた話が、現実に進んでいる現場が目の前にあったなんて、、、
「共同売店」というしくみがありながら、現在はまったく生かせていない現実。
この一見のんびりした村で、刻一刻と進んでいる現実。
「共同売店ファン」を自称しながら全く不勉強で、そんな現実も知らなかった自分。
共同店のもつ福祉的な機能、という話は何度も聞いたことがありましたが、
ここまで具体的な問題として考えさせられたのは、今回が初めてでした。

何だか暗い話になってしまいましたが、、、これが現実なんですね。
もちろん恩納村だけでなく、沖縄で、全国各地で起きている現実。
のんびりしてるヒマはないようです。
共同売店を利用した地域ケアのしくみを、ぜひ作らなければならないです。



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この記事へのコメント
どうも、ずいぶんとご無沙汰しております。

今回はかなり深い問題をとりあげていますね。難しい問題です。
沖縄の人はやさしくておとなしいですからね、どんどんつけ込まれてしまう。

お互い多忙で、突っ込んだ議論ができていないのですが、
近いうちにまた勉強会しましょう。

あ、その前に、共同売店ものがたりの打ち上げと忘年会ですね。
と言う私が一番時間がなくてごめんなさい。
Posted by みやぎ at 2006年12月19日 15:30
こちらこそご無沙汰してスミマセン!
お忙しい中コメントありがとうございます。

私の知識では、付け焼刃みたいな問題提起しかできなくて申し訳ないのですが、、、
地元の方や、福祉の現場の方、地域活動を実践されている方々から本格的な議論が出てくることを期待して、恥ずかしながら書いていきたいと思っています。

ぜひ勉強会しましょう。

打ち上げと忘年会!やらなきゃいけないですね、ちゃんとしたお礼もまだでした。
しかしもう日にちが、、、、新年会にしましょうか?(笑
Posted by マキシ at 2006年12月20日 20:11
ドタバタ日記にお立ち寄りいただき、ありがとうございました。
この福祉と共同店の記事は大変興味深いですね。
過疎地だけでなく、都心でも必要な機能になりつつあるように思います。

結城先生からは、沖縄と宮城県丸森とのモノや人の交流についてはお話をお聞きしています。どうしても東京と地方という図式で捉えがちですが、地方同士もこれからはどんどんつながっていければいいですね。
Posted by LJ21 あさだ at 2006年12月26日 22:49
宮城さん、皆さん、こんにちは
このブログ発見しましたので、TB張りました。
どうぞよろしく!
小笠原や奄美、トカラにも共同店らしきものがありますよ
Posted by bonin(島嶼学会の山上) at 2007年01月06日 13:10
boninさん、コメントありがとうございます。
小笠原や奄美にもあるんですか!
ぜひ詳しくしりたいですね~

宮城先生のお知り合いですか?
いろいろ教えていただけると嬉しいです。
Posted by マキシ at 2007年01月17日 11:19
コメントを見落としていました。ごめんなさい。宮城さんとは島嶼学会でご一緒です。小笠原は、返還前は、民政府がなく軍政下にあり、法律も小笠原軍法で日本法の適用が事実上なく、沖縄復帰前に政府調査団が調べた結果、店舗運営に共同持ち分があったりしたので、慌てて生協の形を取ったようです。

2月13日から小笠原に行ったので14〜16日辺りの記事に、小笠原生協の店内の様子を載せています。

あと気になっているのは、兵庫県宝塚市に佐曽利生協という共同店があります。生協としても最小のはず!
これからもどうぞよろしく!
Posted by BONIN(山上) at 2007年03月05日 22:29
 
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