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2007年05月17日

広島県、川根地区の「共同売店」

前回の報告から、ちょっと間が空いてしまいましたが、3月に呼んで頂いた、滋賀県東近江市の地域づくりイベント、「ほんまに私(みんな)が主役のまちづくり」の報告その2です。

イベント概要はコチラ、 滋賀報告1はコチラを参照してください)


広島県、川根地区の「共同売店」

こちらが、川根振興協議会(広島県安芸高田市)辻駒健二さんです。
辻駒さんは、地域づくりや住民自治の分野では有名人です。
1月にNHKの番組で内橋克人さんと一緒に出演されていたのをたまたま見て、
「こんな人がいるんだー、すごいなー」
と思っていたんですが、2ヶ月後に直接お会いできるという幸運に恵まれたのでした。


広島県、川根地区の「共同売店」

川根振興協議会は、地域の諸問題を住民の手で解決しようと1971年に設立された自治組織で、辻駒さんはその会長であり、広島県の安芸高田市地域振興推進員も努めておられます。

川根(旧・川根村)は、19の集落におよそ260戸、人口600人ほどの地域です。
川根村は1956年(昭和の大合併)に高宮町へ、さらに2004年(平成の大合併)に安芸高田市へと合併されています。
最初の合併後、役場、学校、病院、商店街などが次々と消えていき、2000人いた人口は3分の1に。過疎化、高齢化が深刻となっていました。

大きな転機となったのは1972年、広島を襲った集中豪雨がもたらした大水害で、川根地区は孤立し、大きな被害を被ります。
この時、「もう行政には頼れない、自分たちでできることは自分たちでやらねば」という危機感と自治意識を強く持ち、災害復興だけではなく、産業、福祉、教育などあらゆる分野で自治活動を進めていきます。

川根の取り組みは、やがて高宮町全体に広がります。
そして、地域住民が加入する振興会が、それぞれに予算と権限を持ち、町役場と役割分担をしあうという「高宮方式」は、地域自治のモデルとして全国に知られるようになります。


広島県、川根地区の「共同売店」

この川根地区に万屋(よろずや)という店があります。
万屋は、住民の共同出資によって誕生した「共同売店」です。

7年前、農協の合併に伴う合理化で、高田郡農協は川根地区にあった農協売店の閉鎖を決定しました。
地域に一つしかない売店がなくなるというのは大変なことです。
特に、お年寄り、車に乗れない人、立場の弱い人は、その地域では誰かの助けなしには生きていけないということです。

閉鎖の話を聞いてすぐ、辻駒さんは農協の組合長の元へ行き、
「どうしても廃止するなら、その施設をくれ」
と言ったそうです。
そして地域の人たちに出資を呼びかけます。
しかし、始めはみんな心配して、
「出資して赤字になったらどうするんだ、また出資しろ、というんだろう」
と言ったそうです。
その時、辻駒さんは、
「みんながそれほど心配するなら大丈夫。店がつぶれないように、店で買い物するでしょうから。車に乗れない高齢者を支えるためにも、町に買い物に行くのを10回のうち、7回にして店を利用すればちゃんと儲かる」
と説得してまわった。
その結果、1戸1000円の出資に260戸の全戸が応じて、農協は「万屋」として、またガソリンスタンドは「油屋」という、地域による「直営売店」に生まれ変わりました。

実際の経営は、協議会の副会長でもある岡田さんの建設会社に依頼。
また、たとえ1000円ではあってもきちんと「株券」を発行して、一人ひとりが「株主」であり、みんなの店だという意識を持つよう工夫しているようです。
現在は、国の助成金で老朽化していた店舗も建て替えることができ、万屋の周辺は「川根タウンセンター」として整備が進んでいるようです。

岩手日報06.6.1「とことん住民力」


広島県、川根地区の「共同売店」

滋賀の帰りに、ぜひ川根にも寄っていきたかったんですがね~
さすがにそこまでの時間はありませんでした。

私は万屋のことを上記のNHKの番組で初めて知ったのですが、「これは共同売店だ!」と思いました。
宮城県丸森町大張地区の「なんでもや」もそうです。
合併の繰り返しで役場そのものがなくなり、行政サービスは停止。
本来「組合員」のものであるはずの農協も、巨大化した組織を守るための「合理化」で地域から撤退していく。「儲けるだけ儲けて、儲からなくなったらサヨウナラ」というのは、スーパーやコンビニと変わらない。

もちろん沖縄にある歴史的な意味での「共同売店」ではないですが、設立に至る背景には共通するものがあると思います。
共同店が誕生した100年前の沖縄には、そもそも「行政サービス」というものがなかった。

ちなみに、辻駒さんに
「沖縄の共同売店や、宮城県のなんでもやを知ってたんですか?」
と聞いたところ、
「今回、初めて知りました」
とのことでした。

ということで、長くなりましたので、この辺で。

この翌日、北川さんの案内で、茗荷村しみんふくしの家八日市、しみんふくし滋賀の材久さんなどを見せていただくことができました。
共同売店の福祉的機能を、継承し発展させるヒントを教えていただきました。
次回、その紹介をしたいと思います。



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