てぃーだブログ › 共同売店ファンクラブ ブログ Kyodobaiten FC Blog › 共同売店訪問記 › 湧川共同売店で感じたこと

2010年07月16日

湧川共同売店で感じたこと

先日、今帰仁村湧川集落にある、湧川共同売店に行ってきました。
実は今まで、この湧川共同売店の存在をまったく知りませんでした。なので、このブログでも初登場、『共同店ものがたり』でも掲載されていない売店です。まだまだ不勉強ですみません、、、。

どうして今回、知ることができたのかというと、売店の近くに住む方から、
「近所の共同売店が存続の危機にあるので、ぜひ知恵を貸してほしい」
という連絡を頂いたからでした。

30年年近く前の沖縄国際大学の調査(『南島文化 第5号』)の一覧を確かめてみると、どうやら戦後の設立ですが、当時確かに経営を存続しています。
しかし現在の電話帳などにはまったく載っていない(たぶん)。こういう場合は、すでに無くなっているか、完全に個人商店に変わってしまっていることがほとんどだと思います。それに店の前の道は何度も通っていので、せめて看板があれば気付いていると思うのですが、看板もありませんでした。(まだこういう共同売店がありそうです。ご存知の方はぜひお知らせ下さい)

湧川共同売店で感じたこと

ということで行ってみました。

本部半島を循環する国道505号に面していて、伊豆味や呉我山から抜ける県道123号が突き当たる交差点のすぐそばです。
両脇は開いているですが正面のシャッターが下りていて、一見閉まっているように見えました。営業しているのか不安になったのですが、入ってみると確かに営業していました。品揃えは少なく、寂しい状態です。

10年以上、店を任されているという方に話を伺いました。最初は「何者?」という感じで怪しまれたようですが、今となっては貴重な『共同店ものがたり』を差し上げ、「共同売店を応援するためにあちこち巡って話を聞いています」と話したら、とてもいい方でいろいろなお話を聞くことができました。

 ・湧川部落全体ではなく、一部(2班と3班)の人による任意の組合による売店である。
 ・株主(組合員)は高齢化し、亡くなっている人も多く、かなり減っている。
 ・常に利用する方は、高齢者が数人ほど。
 ・部落自体も人口が減っていて、昨年で小学校も廃校になった。(参考1 参考 参考)
  (今帰仁村のHPの統計によると湧川集落は346戸、812人)

どの売店もそうなんですが、湧川売店もかなり厳しい状態です。わずかながらいる利用者のためにと、何とか店を開けている状態。
組合長さんや主任さんなど組織の中心的な方々が高齢で亡くなったりしていて、引き継ぎもままならない状態で、組織としての運営が止まっている状態のようです。理事会や常会のような話し合いの場も長い間行われていないとか。

共同売店を応援したい、という思いでファンクラブを作りましたが、こういう状況を聞くたびに「自分に何ができるのだろう」と途方に暮れます。
まずは正確に状態を把握して(利用者、組合員数、株や資本金、売上、資産、負債、補填状況などなど)、商店としての機能を取り戻すことが必要でしょう。だけどまず最初に大切なのは、地元の人たちが「店はなくしてはならない大切な財産だ」と理解することだと思います。商店としての機能だけに目を奪われていると、「儲からないし、スーパーに太刀打ちできないし、潰れて当然」となります。しかし実はそれ以外にもさまざまな役割を果たしているのです。それをいかにして見つけ、評価し、地域の人で認識を共有するか、という点にかかっているのだと思います。

話を聞いていた30分ほどの間に、お客さんは一人。飲み物と煙草を購入。その他は、レンタカーでドライブ中の観光客や工事関係者らしき人が、店の前の自動販売機を利用した程度。ちゅら海水族館ができてからはだいぶ交通量は増えたようで、経済効果はないことはないのでしょうが、、、。

お店の方の話では、地元の高齢者の中に、
「売店に行くために道を渡ろうと車の流れが切れるのを待っていたら、17台も待ってようやく渡れた」
という方がいたそう。
道路が広くなれば便利に見えますが、それまでの集落を分断してしまうことがありますね。たかが数メートルの幅、若い人には何ともないですが、高齢者にとっては生活圏を分断する障壁なんですね。例えはよくないかもしれないですが、野性の小動物などもそうです。今まで通っていた売店に行きたくても行けなくなったという高齢者は、たくさんいるはずです。「たかが売店」ではなく、食べ物を含め生活必需品を手に入れるための最低限の社会インフラです。

車を運転できる若い人たちは、名護市街の大型スーパーなどに吸い寄せられてしまう。小さな売店の仕入れ値よりも安いので、大型店だって特売品からは儲けなんかないわけですが、お客さんは当然そっちへ行っていまう。体力のない小さな店はつぶれてなくなっていく。すると大型店はますます大きくなっていく。

「えげつないよな」と言っていた関西大の伊東先生の言葉を思い出します。
もちろん大型スーパーで働いている皆さんは、「お客様のために1円でも安く」と思って一生懸命に売っています。そして買う側も、安くて品揃えの豊富な大型店へ行った方が、便利で得した気分になりますが、実はその行為か車に依存した街を増やし、個人は車を所有するコストが増加する。自治体は道路や電気や上下水道を整備する社会コストを負担させられる。そして車社会化することで自立した生活を送れない人たちを生み出し、田舎を老父母を施設に入れたり都会に呼んだり、介護したりするコストなど、社会的も個人的にも、かえって負担を大きくし、損しているような気がします。

ちなみに伊藤先生によれば、日本より先に市街化したヨーロッパ各地では、各地域に「商店」「薬局」「郵便局」という社会インフラが存立できるよう、出店規制(商業調整)などさまざまなまちづくりのルールを定めているそうです。現在の日本の大規模小売店舗立地法には、そのようなバランスをとる機能はありません。無秩序に都市を肥大化させ、地方を過疎化させ、都市も農村もともに疲弊していく。

「競争」は必要でしょうが、地域社会の一構成員としての「責任」も必要です。儲からなくなったら、困る人が出るのを分かっていてもさっさと撤退する大型店、チェーン店にも当然「社会的責任」はあるはずです。ところが一時期急増したコンビニは、いつの間にか携帯の販売店に変わっています。もちろん各チェーン店の店員さんを責めるつもりはないですが、東京の大きなビルの中にいる本社や本部の人たちに、共同売店や日本各地の小さな商店を「この店がなくなったら困る人がいるから」と必死で守っている人たちのことを知ってほしいです。

湧川売店から話がそれてしまいました。
続きはまた次の機会に。(と書いて、続きを書いてないことも多いのですが)



同じカテゴリー(共同売店訪問記)の記事
伊平屋島の共同売店
伊平屋島の共同売店(2012-07-23 18:15)

GWも共同売店へ!
GWも共同売店へ!(2011-05-02 13:15)


この記事へのコメント
共同売店について分からない事があるのですが、旅行者も利用して良いものなのでしょうか?
仕入れが少なく品切れにしてしまってはしょうがないですし、でも村の人々だけでの購入では限界があると思いますし。

また、現地にしかないものはないのでしょうか?本土の人や国際通りの店などが共同売店に発注出来る様な手作りのものなど現地にしかないものや、本土から共同売店に届けられる事が可能な必要なものなど。

株式という事ですが、株式は現地の方だけですか?
村民以外が株主になる事は出来ないのでしょうか?

色々と不思議に思う事もあり、教えていただけるとうれしいです。
Posted by ひで at 2010年07月16日 01:39
はじめまして、ひでさん。
もちろん旅行者も利用していいですよ。商品は少ないですが、コンビニでは得られないものを、ぜひ「感じて」欲しいです。

現地にしかないもの、は店によります。国頭村の奥共同店のように「奥みどり」という地元のお茶を生産販売しているところもあります。「奥みどり」はけっこう有名ブランド茶で、県内お土産品店でも見かけますし、県外でも販売されています。
そこまでの商品は少ないというかほとんどないですが、地元の方が手作りしている商品など売っている場合もあります。

株式会社ではないので「株式」ではなく、組合員による出資金を昔から「株」と呼んでいます。任意の組合ですので、地元の人たちで規約を決めています。集洛外の人が株主(組合員)になれる店は、残念ながらまだ聞いたことがありません。私もなりたいんですが(笑)

たぶん不思議に思うことはたくさんあると思います。私の知っている限りお答えしますので、お気軽にお尋ねください。

参考までに、沖縄大学の宮城先生の書かれた本のPDFデータ版が、無料でダウンロードできます↓。
『共同売店 ふるさとを守るための沖縄の知恵』
http://www.dl-market.com/product_info.php/page/1/sort/6d/price/2/products_id/68613
サイトへの登録をしたくない場合は、別途ファイルを送りますのでご連絡下さい。

これからも共同売店を応援していきましょう!
Posted by マキシマキシ at 2010年07月16日 02:04
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。