2011年04月05日

共同売店と災害

3週間が過ぎましたが、今回の地震・津波、さらに原発事故は信じられない災害になってしまいました。
沖縄ではなかなか実感ができないのですが、テレビや新聞の報道は辛くて今も見つづけられないほどです。
皆さんや皆さんのお知り合いにも災害に遭ってしまわれた方がいるかも知れません。心よりお見舞い申し上げます。

私はこれまで「共同売店は災害時にも重要な機能を果たすはず」と言ってきました。
ブログの中でいずれ防災をテーマに書こうと思っていましたが、なかなかまとめることができませんでした。
もちろん防災のことなど私はまったくの素人です。
しかし昨年の暮れに中越防災安全推進機構の皆さんが視察に来られたこともあり、改めて共同売店の知恵や経験を、災害時や復興時にどう生かせるかを考えざるをえませんでした。

実は沖縄の共同売店も、未曾有の災害を経験し、乗り越えてきています。
それは「沖縄戦」という災害(戦災)です。
もちろん戦前の売店の建物などは空襲などでほぼ全てなくなりました。
そして多くの命が奪われ、経済、社会インフラ、交通など全てが破壊された戦後の沖縄で、各集落の人々は共同売店を復活させていきました。
終戦直後に米軍の配給所として利用され、それがのちに共同売店になったものも少なくないようです。
また戦後~1960年代にかけて新たに設立された売店も多く、この頃の店舗数が最も多いことも、共同売店が災害復興期に重要な役割を果たしたことを物語っています。

戦後、ヤンバル周辺の集落の人たちは、家を建てるための製材所を立てたり、ディーゼルエンジンによる発電など生活インフラを自らの手で作り上げていきます。
これらの事業の基盤になったのが共同売店です。
そしてその後も農業や産業を振興し、教育や福祉面でも教育資金や病気見舞金など大きな役割を担っています。

戦災と今回のような地震・津波による災害にはまったく異なる点も多いですが、防災に必要な機能もあります。
大きく3つに分けてみました。

1. 地域のつながりの強化
2. 救援物資の備蓄機能
3. 復興後の「過疎」の問題


1.地域のつながりの強化
共同売店が地域のつながりに重要な役割を果たしていることは、これまでにも何度も書いてきました。
防災活動においても、地域の絆が大切だということは繰り返し言われてきていることと思います。
「顔の見える関係」を築いている地域密着の店は、地域の人が日常生活の中で利用する機会が多いことから「つながりを作る場」となっています。
この「絆」作りが、防災その他の地域活動の基礎になるわけです。
災害直後の救助活動や安否確認にも、地域住民のつながりが重要です。
また、自治体が住民に対して防災情報の周知する際や、地域情報の把握する際にも、地域密着店は活用できるでしょう。

2.救援物資の備蓄機能
物資を分散して備蓄しておくことは、都市部から離れた場所や孤立しがちな小さな集落では特に大切です。
わざわざ新たに備蓄するための倉庫などを建設するよりは、既存の共同売店や商店を活用すべきだと思います。
特に沖縄では、公民館(自治公民館)と共同売店は一体であることが多いです。
普段から多くの商品を扱っているため、備蓄物資の管理や更新も効率よく行えるのではないでしょうか。
また、そのような役割を任せることで、集落自体の活性化にもつながるはずです。
今後、東北の被災地でも復興に向けて、都市計画やまちづくりが進んでいくはずですが、「地域コミュニティの力を生かした、小さく多機能な拠点を、分散して作っていく」という視点をぜひ持ってほしいと思っています。

3.復興後の「過疎」の問題
戦後の沖縄の集落では、復員によって人口は一時的に増加しますが、1970年代には人口の流失が加速していきます。そのような過疎化、人口減少が進行していく中でも共同売店が集落の生活を支え続けているのはご存知の通りです。
中越の震災の後、元々過疎化に悩んでいた村には、復興後もさらなる人口の減少に拍車がかかっているようです。
今回の東北の震災でも、都市地域を中心に建物やインフラは数年で復興するでしょうが(阪神大震災の神戸地域などもそうでしょう)、その他の元々過疎化していた多くの地域が、一層深刻な過疎化に見舞われることが予想されます。
昨年、案内した中越防災安全推進機構の皆さんが注目していたのは、「防災」の部分ではなく、その後の「復興~過疎、地域の自立」に果たす共同売店の役割の部分でした。
ここでも先ほど2で書いた「地域コミュニティの力を生かした、小さく多機能な拠点を、分散して作る」ということが重要なことが分かると思います。
ここでいう多機能とは、「防災」に限らず、「高齢者福祉」「障害者福祉」「子育て支援」に始まり、教育、産業、観光、ビジネス、金融、など行政や法律の垣根を越えた「地域の生活視点」での多機能性です。
分かりやすく言えば、「ガソリンスタンドと商店とデイサービスと銀行」を同じ場所でできるようにすることです。都会でしか暮らしたことのない人には冗談のように思えるかもしれませんが。

まとまりのない文章で申し訳ないですが、これらは沖縄の共同売店だけではなく、全国に増えている住民出資の店、また地域に密着した商店や小売店でも災害時には重要な役割を果たせるはずです。
地域密着の店の再評価を進めたり、防災に積極的に活用する必要があると思います。


追記:奄美新聞で取り上げてもらいました。



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この記事へのコメント
マキシさん 

先日は定例会に参加させていただき、ありがとうございました。
松川のマチヤグワー(個人商店)調査報告など
興味深い話が盛りだくさんでした!!
また、参加させていただけたらと思っています。
Posted by ジョー小泉ジョー小泉 at 2011年04月18日 18:06
小泉さん、ご参加ありがとうございました。
ブログでのご紹介もありがとうございます!
http://sapientia.ti-da.net/e3353105.html
次回もまたお待ちしてます!
Posted by makishi at 2011年04月22日 23:03
 
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